2025年の米年末商戦が本格化するなか、トランプ大統領は関税収入を原資に「所得税の大幅減税・将来的な廃止」構想に言及し、政策論争が一段と熱を帯びています。
全米小売業協会(NRF)はホリデー売上が初の1兆ドル超と予測する一方、コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数は7カ月ぶり低水準へと落ち込み、景況感の冷え込みが鮮明になりました。
関税による物価上昇圧力と、大幅値引きで売り上げを確保しようとする小売各社の攻防が、米景気の行方を占う焦点となっています。
米年末商戦の現状と焦点
まずは、2025年の米年末商戦がどの程度の規模と勢いを持ってスタートしているのか、その全体像と注目点を整理します。
年末のホリデーシーズンは、米小売売上の約2割を占める重要な書き入れ時であり、近年はオンライン販売の拡大と値引き競争が一段と激しくなっています。 NRFは2025年11〜12月の小売売上が前年比3.7〜4.2%増となり、総額1.01〜1.02兆ドルと初めて1兆ドルを突破すると予測し、物価高と関税の逆風下でも「量」は維持される見通しです。
- NRFは、過去10年でホリデー売上が約6,000億ドル強から約1兆ドル規模へ拡大したとし、物価上昇と人口・所得の伸びが背景にあると指摘しています。
- タリフ(関税)とインフレが消費者物価を押し上げるなかでも、価格に敏感な米消費者が外食やレジャーを削り、小売支出を優先する動きがみられると分析されています。
【ビジネス英語表現】
- Holiday shopping season is in full swing.
年末のホリデー商戦が本格化している。
トランプ関税と「所得税ゼロ構想」
続いて、市場の関心を集めている「関税で所得税を代替する」という大胆な構想の中身と、財政面から見た実現可能性を解説します。
トランプ大統領は感謝祭の米軍関係者とのビデオ通話の場で、「今後数年で所得税を大幅に削減し、完全に廃止する可能性がある」と発言し、その財源として記録的な関税収入を挙げました。 関税収入が過去最高水準にあることは事実ですが、専門家は「連邦所得税の規模には到底届かない」として実現性に強い疑問を投げかけています。
- 報道によれば、2025年度の関税・物品税収入は約1,700〜2,000億ドル規模とされる一方、連邦所得税収入は2兆ドル超で、関税のみで代替するには「桁違いのギャップ」があると試算されています。
- トランプ政権は、低中所得層向けの減税や「タリフ・ディビデンド(関税配当)」と呼ばれる一時給付案にも言及しており、選挙を意識したポピュリスト的な色彩が強いとの見方が出ています。
【ビジネス英語表現】
- Tariff revenues alone cannot fully replace income taxes.
関税収入だけでは所得税を完全に代替することはできない。
関税強化の歴史的背景
現在のトランプ関税を理解するには、19世紀の「関税国家」から、20世紀以降の「所得税国家」へと移行した米財政の歴史を押さえておく必要があります。
今回のトランプ関税は、2018年以降の対中貿易戦争に端を発し、その後も対メキシコ・EUなどへ対象を拡大してきた「アメリカ第一」政策の延長線上にあります。 伝統的に米国は、19世紀には関税が主要財源だった時期があるものの、20世紀以降は所得税と法人税が主軸となり、関税は補完的な位置付けにとどまってきました。
- 南北戦争前後の米国では、関税が連邦政府歳入の大半を占めており、国内産業保護と財政確保を兼ねる政策手段として用いられていました。
- しかし、1913年の所得税導入以降は直接税が主流となり、第二次世界大戦後の自由貿易体制の下で関税は徐々に引き下げられ、「景気保護よりも貿易自由化」という流れが支配的になりました。
【ビジネス英語表現】
- Historically, the U.S. shifted from a tariff-based to an income-tax-based revenue system.
歴史的に、米国は関税中心から所得税中心の歳入構造へと移行してきた。
消費者信頼感の悪化と物価高
表面上は売上が伸びていても、足元の消費者心理はむしろ冷え込みつつあり、その背景には「物価高」と「関税」の二重の負担があります。
コンファレンス・ボードが公表した2025年11月の消費者信頼感指数は88.7と、10月の95.5から6.8ポイント低下し、4月以来の低水準となりました。 将来の所得や雇用・景気に対する期待を示すサブ指数も63.2と、リセッション・シグナルとされる80を10カ月連続で下回っており、家計心理の悪化が鮮明です。
- 調査担当者は、回答者のコメントの中で「インフレ」「関税」「政府閉鎖」といった懸念が繰り返し挙げられていると指摘し、生活コストへの不安が信頼感低下の主因だと分析しています。
- 関税は輸入品価格を押し上げるため、家電やおもちゃ、衣料など年末に需要が集中する商品にも波及し、「ホリデーシーズンの値上げ」として家計に直接影響しています。
【ビジネス英語表現】
- Consumers are growing more cautious amid higher prices and policy uncertainty.
物価上昇と政策の不透明感を背景に、消費者は一段と慎重になっている。
小売各社の大幅値引き戦略
関税とインフレでコストが増えるなか、米小売各社は「値上げ」ではなく「値引き」と「プロモーション強化」で乗り切ろうとしている点が大きな特徴です。
AmazonやWalmart、Target、Best Buyなどの大手小売企業は、最大50〜60%の大幅値引きや無料配送キャンペーンを展開し、関税によるコスト増を一部自社で吸収しながら需要確保を図っています。 NRFは、価格に敏感な消費者が増えている一方で、プロモーションが巧みに機能し、全体売上の押し上げ要因になっていると評価しています。
- 報道では、オンライン販売が二桁近い伸びを示し、ブラックフライデー当日のオンライン売上が過去最高水準に達したとされ、デジタル販路の重要性が一段と高まっています。
- 一方で、過度な値引き競争は利益率を圧迫し、関税で増加した仕入れコストを十分に転嫁できない構造になっているとの懸念もあります。
【ビジネス英語表現】
- Retailers are using deep discounts to offset tariff-related headwinds.
小売各社は関税による逆風を和らげるため、大幅値引きを戦略的に活用している。
今後の米景気と日本への示唆
最後に、今回の米年末商戦とトランプ関税が、今後の米景気と日本企業・投資家にどのような意味を持つのか整理します。
ホリデー売上は「量」としては伸びが続く見通しですが、消費者心理の悪化と関税による物価上昇が長期化すれば、2026年以降の消費減速リスクは高まります。 また、関税強化と減税の組み合わせは財政赤字やドル相場に影響し、日本企業にとっても為替・サプライチェーンのリスク要因となります。
- 日本から米国向けに輸出している自動車・機械・消費財メーカーにとって、関税や追加的な通商措置はコスト構造と価格戦略を見直す要因となり得ます。
- 投資家にとっては、米小売株・消費関連株の業績動向だけでなく、関税をめぐる政策リスクや消費者信頼感の指標を組み合わせてモニタリングすることが、今後の運用戦略で一層重要になっていきます。
【ビジネス英語表現】
- Policy-driven risks will remain a key factor for corporate and investment decisions.
政策要因に起因するリスクは、企業経営と投資判断において今後も重要な要素であり続ける。
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