2025年5月、オーストラリアで実施された総選挙は、インフレによる生活費の高騰と、トランプ前米大統領による関税政策の影響が大きな争点となりました。
世界経済の不確実性が増す中、若年層の投票行動や政治参加が今後の豪州政治の方向性を左右する重要な鍵となっています。
本記事では、選挙の背景とともに、ミレニアル世代・Z世代がいかにして未来の政治を変えていくのかを詳しく解説します。
目次
選挙の争点：インフレとトランプ関税
今回の選挙では、生活費の上昇や経済政策が有権者の最大の関心事となりました。
特にトランプ前大統領の関税政策が、オーストラリア経済にどのような影響を及ぼしているのかが注目されています。
オーストラリア総選挙2025は、インフレによる生活費の高騰（rising cost of living：生活費の上昇）と、トランプ前米大統領による関税（tariffs：関税）が中心的な争点となりました。
多くの世帯が、ミルクやパン、電気、ガソリンといった日常必需品の価格上昇に苦しみ、経済的な不安が選挙戦を通じて大きく取り上げられました。
トランプ氏の関税政策は、「経済的な自傷行為（economic self-harm：経済的自傷）」と現職のアルバニージー首相が批判するほど、オーストラリアの輸出産業に打撃を与えています。
特に鉄鉱石や農産物の輸出が厳しい状況に立たされており、国内経済全体にも波及効果が出ています。
各党の政策と選挙戦略
主要政党は、生活費対策や経済安定を前面に打ち出し、有権者の支持獲得に奔走しました。特に若年層へのアプローチがこれまで以上に重要視されています。
現職のアルバニージー首相率いる労働党（Labor Party）は、住宅の手頃な価格（housing affordability：住宅の手頃さ）や医療制度の強化、再生可能エネルギー推進を公約に掲げました。
一方、保守連合（Liberal-National Coalition）のダットン党首は、移民削減や原子力発電推進（nuclear power：原子力発電）などを主張し、経済成長と雇用創出を訴えました。
両党ともに、インフレ抑制や賃金上昇、金利低下を実績としてアピールし、経済管理能力の高さを強調しています。
ミレニアル・Z世代の台頭と投票行動
今回の選挙で初めて、ミレニアル世代とZ世代が有権者の過半数を占め、従来のベビーブーマー世代を上回りました。
若年層の投票行動が今後の政治地図を大きく塗り替える可能性があります。
2025年の総選挙では、ミレニアル世代・Z世代（45歳未満）が全有権者の約43%を占め、ベビーブーマー世代を初めて上回りました。
この「世代交代（generational shift：世代交代）」は、オーストラリア政治に新たな潮流をもたらしています。
しかし、若年層の多くは政治への不信感や無力感を抱えており、実際に投票する主な理由が「罰金を避けるため（to avoid a fine：罰金を避けるため）」という回答が約47%に上ります。
これは、オーストラリアの投票が義務化されているためであり、必ずしも政治への積極的な関心が高いわけではありません。
一方で、SNSやポッドキャストを活用した情報発信が若年層の関心を集めており、従来のマスメディアよりも個別の政策や社会課題に焦点を当てたオンラインメディアが影響力を増しています。
英単語・フレーズ紹介
- compulsory voting（義務投票）：オーストラリアでは18歳以上の市民に投票が義務付けられており、投票しない場合は罰金が科されます。
- disillusionment with democracy（民主主義への幻滅）：若年層の間で、既存の政治体制や政党に対する不信感が広がっています。
若年層が今後の政治に与えるインパクト
ミレニアル・Z世代の増加は、従来の二大政党制を揺るがし、少数政党や無所属候補の台頭を促しています。
今後の政策や政治構造にどのような変化が起きるのでしょうか。
若年層は、気候変動対策（climate action：気候変動対策）、住宅問題、教育、医療など、生活に直結する課題への関心が高い傾向にあります。
これらのテーマが主要政党の政策に反映されるようになり、若者の支持を得るために各党はSNS戦略やインフルエンサーとの連携を強化しています。
また、若年層は従来の労働党・保守連合だけでなく、環境政党グリーンズや少数政党、無所属候補への支持も拡大しており、議会の多様化（parliamentary diversity：議会の多様化）が進んでいます。
これにより、今後は「マイノリティ政府（minority government：少数与党）」や連立政権が増え、政策決定において幅広い合意形成が必要となるでしょう。
英単語・フレーズ紹介
- policy shift（政策転換）：若年層の関心に合わせて、主要政党の政策も変化しています。
- crossbench（クロスベンチ／無所属・少数政党議員）：議会で与党・野党に属さず、政策ごとに賛否を決める議員。
ビジネスパーソンが注目すべきポイント
オーストラリアの政治動向は、グローバル経済や貿易、環境政策にも大きな影響を及ぼします。
日本のビジネスパーソンにとっても、今後の豪州市場の変化を見据えるうえで重要な示唆が得られます。
トランプ関税による米中経済の減速は、オーストラリア経済だけでなく、アジア太平洋地域全体のサプライチェーンや貿易構造にも波及します。
また、若年層の台頭による政策転換や議会の多様化は、ビジネス環境や規制にも影響を与える可能性があります。
英単語・フレーズ紹介
- supply chain disruption（サプライチェーンの混乱）：関税や地政学リスクによる国際的な物流の遅延・コスト増。
- economic uncertainty（経済的不確実性）：グローバルな政策変動や市場の不安定さを指します。
まとめ
2025年のオーストラリア総選挙は、インフレとトランプ関税という二大経済リスクを背景に、若年層の投票行動がこれまで以上に注目されました。
ミレニアル・Z世代の台頭は、政策や政治構造に大きな変革をもたらしつつあり、今後の豪州政治の行方を占ううえで欠かせない要素となっています。
日本のビジネスパーソンにとっても、こうした動向を的確に捉え、グローバルな視点での戦略構築が求められる時代です。
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