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【選択的夫婦別姓制度】諸外国の友人と議論するための例文付きガイド

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結婚後もそれぞれの姓を名乗る「選択的夫婦別姓制度」は、日本ではいまだに導入されていません。多様な価値観が広がる現代社会において、夫婦が同姓を名乗ることを法律で義務づける国は、実は日本だけです。本記事では、「夫婦別姓とは何か」「なぜ日本で議論が続いているのか」「海外との違い」などを、日本独自の文化的背景とともに解説します。さらに、アメリカ人に説明する際に役立つ英語表現も紹介します。

夫婦別姓とは何か?

「夫婦別姓」とは、結婚しても夫婦がそれぞれの生まれた姓を名乗ることを認める制度です。多様な価値観が認められる現代において、個人のアイデンティティを守る方法として注目されています。世界的には一般的な考え方ですが、日本では民法により夫婦同姓が義務づけられており、例外的に国際結婚などを除き別姓は認められていません。

日本における「夫婦別姓」の議論は、長年にわたり繰り返されてきました。そもそも、夫婦別姓とは「結婚してもお互いの姓を変えずに生活すること」を意味します。例えば、田中さんと佐藤さんが結婚しても、それぞれ「田中さん」「佐藤さん」として戸籍上の名前を維持するということです。

しかし、日本では民法第750条によって「夫婦は同じ氏を称する」と定められており、結婚する際には、夫か妻のどちらかが姓を変更しなければなりません。統計的には、9割以上のケースで女性が男性の姓に変更しています。これは社会的・制度的な慣習の影響が大きく、職場や公的機関での書類手続きなどがその一因です。

一方、夫婦別姓を導入している国は多く、たとえばアメリカ、フランス、ドイツ、韓国などでは、結婚後に姓をどうするかは個人の自由です。こうした国々では、「家族が同じ姓を持つ」ことよりも「個人の選択の自由」を重視する価値観が強く、法律もそれに対応しています。

現在の日本では、実際に結婚しても旧姓を通称として使い続ける「事実上の別姓」も見られますが、戸籍や法的書類上では変更後の姓が使われるため、完全に平等な選択肢とは言えません。

なぜ日本では選択できないのか?

日本の民法第750条には「夫婦は同じ氏を称する」と明記されており、これは1898年の民法制定以来、基本的に変わっていない規定です。この法制度は、日本の家族観に強く影響されており、個人よりも「家族(家)」を一つの単位として扱うという思想に根ざしています。

特に明治時代以降の「家制度」では、家長を中心とした戸主制度に基づき、家族全員が同じ姓を持ち、戸籍というひとつの記録にまとめられて管理されてきました。この家族観は戦後の民法改正によって戸主制度自体は廃止されましたが、「家族は同じ姓であるべき」という価値観は制度的にも社会的にも根強く残っています。

また、日本の戸籍制度は世界でも珍しい「家単位」での戸籍管理が基本であり、夫婦が同じ姓であることを前提としています。この仕組みがあるために、姓の分離が制度上難しくなっているのです。

加えて、「子どもの姓はどうするのか」「家族の一体感が失われるのでは」といった懸念も反対派の論拠として挙げられます。しかし、選択的夫婦別姓は「別姓にしなければならない」という制度ではなく、「同姓か別姓かを選べる制度」であるため、個人の自由を尊重しつつ、現行制度を残すことも可能です。

選択的夫婦別姓を求める声

選択的夫婦別姓を求める声は、年々大きくなってきています。特に影響を受けているのが、専門職でキャリアを築いてきた女性たちです。長年使ってきた姓を結婚で変えることにより、学会・論文・実績などとの整合性が取れなくなることがあります。これが信用の低下やキャリアへの打撃となるケースも少なくありません。

また、共働き家庭が当たり前になった現在では、夫婦が対等なパートナーとして関係を築く中で、「どちらかが姓を変える」という一方的な負担が問題視されています。男女平等を掲げる現代社会において、この制度は時代遅れだという意見も多く見られます。

さらに、国際結婚や再婚の場合、姓の扱いが複雑になりやすく、「同姓でなければならない」という規定が、柔軟な家族の形を阻んでいる側面もあります。特に再婚で前夫(妻)との間に子どもがいる場合、どの姓を名乗るかによって新しい家庭での心理的負担が生まれることもあります。

こうした声を背景に、これまでに複数の訴訟や議員立法が提出されてきました。2021年には最高裁でも「現行制度は違憲ではない」とする判断が下されましたが、裁判官の中には違憲とする意見もあり、社会的議論は現在も継続中です。

海外ではどうなっている?

アメリカやヨーロッパ諸国では、結婚後の姓の扱いはカップルが自由に決めることができます。たとえば、アメリカでは、結婚しても夫婦がそれぞれの姓を保つことは珍しくありません。法律上も、どちらの姓を名乗るか、あるいは姓を合体(Hyphenated name)するかを選択できるようになっています。(ハイフン付きのダブルネームを使うカップル)

ヨーロッパ諸国でも事情は似ており、フランスでは法律上、結婚後に姓が自動的に変わることはなく、旧姓のままが原則です。ドイツやスペインなどでも選択肢があり、性別にかかわらず姓の決定は夫婦の合意によって決められます。

韓国でも2005年に民法改正が行われ、妻が夫の姓を名乗る義務はなくなりました。これは儒教的な伝統が色濃く残る社会においても、個人の権利が尊重される方向に法改正が進んでいることを示しています。

これらの国々に共通しているのは、制度が「家族の一体感」を維持することよりも、「個人の選択や自由」を重視している点です。また、子どもの姓の選び方についても柔軟な制度が整備されており、日本とは対照的な法体系となっています。

こうした海外の事例と比較することで、日本の制度がいかに個人の自由を制限しているか、そして法改正の必要性がより明確になるでしょう。

アメリカ人に説明する際の英語表現

アメリカ人に日本の夫婦別姓制度の現状を説明する際には、文化的背景や法的制約をわかりやすく伝える必要があります。以下に、実際に使える英語フレーズとその日本語訳をいくつかご紹介します。

アメリカ人に説明するときにオススメの英語表現と日本語訳

英語:In Japan, married couples are legally required to share the same family name, which is quite unique globally.

日本語訳:日本では、結婚した夫婦は同じ姓を名乗ることが法律で義務づけられており、これは世界的にも珍しい制度です。

英語:There is ongoing debate in Japan about allowing “separate surnames” after marriage, but no legal change has been made yet.

日本語訳:結婚後の「夫婦別姓」を認めるかどうかについては日本で議論が続いていますが、法改正には至っていません。

英語:The issue is closely tied to Japan’s traditional family registry system, called “koseki,” which emphasizes family unity over individual identity.

日本語訳:この問題は「家族の統一」を重視する日本の伝統的な戸籍制度(“koseki”)と深く関係しています。

英語:Many Japanese women are forced to give up their maiden names when they marry, which can affect their professional identity.

日本語訳:多くの日本人女性は結婚によって旧姓を手放すことを強いられ、それが仕事上のアイデンティティに影響を与えることもあります。

英語:Some couples use two names unofficially, but legally only one surname is recognized in the family registry.

日本語訳:一部の夫婦は非公式に別姓を使っていますが、法的には戸籍上の姓は一つしか認められていません。

まとめ

選択的夫婦別姓の議論は、単なる「姓」の問題ではありません。それは、個人の尊厳、家族の多様性、そして時代に即した制度設計を社会全体に問いかけるテーマです。「選べる自由」を求める声が高まる今こそ、制度の在り方を見直すタイミングかもしれません。

これまで見てきたように、日本における夫婦同姓制度は、明治時代に確立された「家制度」に根ざした価値観を背景に持ち、現在に至るまでほとんど変更されていません。しかし現代は、価値観も家族の形も大きく多様化しています。共働き世帯の増加、国際結婚や再婚家庭の増加、そして女性の社会進出などにより、「姓を一方的に変えることへの違和感」が顕在化してきました。

選択的夫婦別姓とは、「全員が別姓にしなければならない」制度ではなく、「同姓でも別姓でも選べる」制度です。つまり、現在の夫婦同姓制度を維持したい人たちの選択も守りながら、それに違和感を抱く人たちにも別の道を開くという、より包括的な制度です。

この議論の本質は、「誰もが自分の名前を選ぶ自由があるべきではないか」という個人の尊厳に関する問いです。そして、社会の制度は時代とともに変わるべきであり、それを支える法制度もまた、柔軟に対応していくことが求められています。

日本はすでに、多様性やジェンダー平等といった価値観を社会的に掲げています。であればこそ、「名前の選択すらできない」という現行制度の矛盾を見直す必要があるのではないでしょうか。

「家族の絆は姓で決まるのか?」という問いに、私たちはどう答えるべきか。選択的夫婦別姓は、その問いに社会全体で向き合うための重要なテーマであり、未来の家族の在り方を考える大きな一歩となるはずです。

stephen pong

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